MyPacE

自分のペースで進み行く、全スキルマスターと言うお馬鹿な山頂へ。

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7話 村長  

 夢を見た。

 それは漆黒の・・・まるで烏のような、大きな黒い羽を持つ女性。

 周りは闇に包まれ、何故か女性だけ白く照らしている・・・女性の存在を気づいてもらおうとしているかのように。

 そして囁きかけるような、それとも一人天へ願いを言うかのように。

 耳に触れる声は儚く、しかし真っ直ぐへと届けるかのように澄んでいた。







 「お願いです、遠矢・・・。」

 「・・・・・・。」

 「此方の世界に来て下さい・・・。」







 そこで初めて、囁かれる声に違和感を覚える。







 「ティルナノイが・・・破壊されようとしています。」

 「ティルナノイ・・・?」







 遠矢からの問いは空しく闇にかき消されたのか、女性は悲しそうな表情を向けたままであった。

 身にまとっている白く美しい布は光を反射させる。

 それは・・・まるで女神であると象徴するかのように・・・。

 そう思った時には既に、目の前の光は消え去り暗闇の世界に投げ込まれていた。






















 皆この世界を愛していると言う。

 遠矢の様、他の世界から来る人も珍しくはないらしいが見事に溶け込めていることに驚いた。

 ある人はリュートと言う3本の弦を奏でる楽器をこなし、広場で演奏する。

 ある人はヒビが入った剣に手入れをしようと、馬に乗り修理に急ぐ。

 ある人は薬草を手にしてフラスコと睨めっこし、苦い顔をしている。



 遠矢はその、薬草を手にしている人に見覚えがあった。

 人間のようには見えるが、短く整っている栗色の髪をかけている耳は、垂れてはいるが尖っている。

 『エルフ』・・・この世界ではそう呼んだ。



 声をかけようかとしたが、エルフは少々気分悪そうにしながらも何処かへ去ってしまう。

 意外に足が速く、追うにも自分の足では追えないと遠矢は判断し、声を漏らしただけで終わった。







 「やっと見つけた!」





 不意に背後から声がかかり、遠矢は思わず体をビクリと低くし振り向いた。

 少年と思わせる少々高い声であり聞き慣れないものでもあって、他の人に声かけたのではないかと思った。

 しかし、声の主は気がつかせようと手を振る人などいないし、寧ろ他の旅人もきょろきょろと周りを見渡していた。







 「???」







 遠矢が頭上にハテナマークを多数浮かべると、ふと動く影を見つけた。

 それはとても小さいもので、誤れば踏み潰してしまうのではないかと思うほど、目立たないものだ。

 ただ見た瞬間理解したことは、遠矢を呼び止めた者は人間ではないと言うことだけだった。







 「君が遠矢だよね?探したよ。」

 「えっと・・・。」







 遠矢の足元まで来たそれは、明るい黄土色の毛を持つネズミであった。

 手のひらか肩の上などに乗せることが出来るのではないかと思える大きさで、クリクリした大きな目に少々大きい前歯を持つ。

 長い尻尾は細くフサフサしていそうで、まさに癒し系の動物である。



 そんなネズミが、何故遠矢を探していたのか。

 まず遠矢が思い浮かべるのは何故ネズミが喋ることが出来るのか疑問に思ったが・・・。







 「柳火から案内役を任されたんだ。」

 「柳火・・・から?」

 「そうそう。僕のご主人様なんだけど、忙しそうだからお手伝いしているんだよ。

  あ、僕の名前はニノリーノ、ニノって呼んでね。君の事はよく聞いてるよ。」







 そのご主人様とは対照的に、よく喋るネズミだなと遠矢は心底から思った。

 しかしニノと呼ばれるネズミはそんなことお構いなしに、機関銃の如くに喋る。

 柳火がニノに案内役を任せたのも、遠矢は自分なりに理解する。



 本当に、彼は話すことが苦手なのではないかと・・・。







 「遠矢たちがここに連れて来られたのは、元々危険から逃げる為でもあるからね。

  でもこの世界も、それなりに楽しめると思うから早く馴染んで欲しいかな。」

 「馴染める・・・かな。」

 「まぁ馴染む為にまずは村長に挨拶しに行こう!きっとまた手間のかかる人と思って白目向けるから。」

 「・・・・・・。」







 ニノはケラケラ笑いながらそう言うが、遠矢には気持ちよく聞こえるものではなかった。

 どうやら、口数は対照的だが喋る内容に毒が含まれているのは似ているらしい・・・。



 ニノは遠矢の手から腕へ、肩へと乗り移動した。

 クリクリとした黒い瞳が間近で見え、頬が緩まない人など居ないと思えるほどの可愛さであった。







 ティルコネイルの村長は、広場にある巨大な木の傍に家が建っているらしい。

 いつも広場にいる旅人ばかりに目がいっていたものだが、改めて見ると木造の家が建っているのに気が付く。

 ニノ曰く、その家が村長の家であり、そして今巨大な木の下で腰を降ろしているのが村長・・・。







 「あの人が・・・?」







 遠矢は目を疑う。

 村長と言えば、ひげを生やしたヨボヨボな雰囲気を想像していたものなのだが、この世界では違うようであった。

 のほほんとした雰囲気を持つのは同じであるが、体格もしっかりしており、目付きもはっきりしている。

 人の心を見透かすような強い光を放つ村長の目は、若いころは戦士だったと言う噂があると、ニノは言った。



 村長は旅人と談笑しているようであったが、遠矢が見ていることに気が付くと目が合う。

 そして優しく微笑みながら、旅人が傍にいるのにも関わらずにゆっくりと手招きしてきた。



 旅人は用が済んだらしく、ふと立ち上がり遠矢の方へと向かっていく。

 その旅人は優しく微笑み、軽く会釈して去っていった。

 遠矢は会釈をし返すだけであったが、ニノは微かだが目を細めたような気がした。







 「初めまして、昨日からこの世界に来ました。遠矢です。」

 「そうか、君が遠矢だね。話は聞いているよ。」







 村長はそう言い、スッと右手を差し出される。それに応えれば、何とも力強さのある人だと遠矢は察する。

 太い声が実によく通りはっきりとしている。これも昔戦士だったとの噂を確信させるものであろうか・・・。







 「ティルコネイルへようこそ、わしはこの村の村長であるダンカンだ。」

 「困ったことがあったら僕かダンカンに聞くといいよ。村にあるものは何でも知っているんだよ。」







 ニノが高い声(いつもの調子なのだが)で言うと、ダンカンは豪快に笑う。

 頼りになる人を見つけたと遠矢は納得していたものだが、当本人は首を振った。







 「ニノ、確かにわしは村にあるものは知っているが、村に起こったことなどは全て見ることは出来んよ。」

 「起こったことはすぐに村人が教えてくれたりしないのですか?」







 遠矢が問うと、ダンカンは少々困ったように首を捻る。このようだと何でも上手く伝わる訳ではないそうだ・・・。

 代わりにニノがダンカンの肩へと移り、遠矢の目が届くように立ち、口を開いた。

 それと同じタイミングで、一羽の白いフクロウが通り過ぎていく。







 「この世界の共通連絡手段は、この白いフクロウが運んでくるものなんだよ。

  だから届くにも少し時間がかかっちゃうんだよ。」







 遠矢は感心する。何故遠矢の世界のことも知識に入っているのか・・・。

 そう思う前に感心してしまうほど、よく喋りとても適切なことであったのだ。

 では素早く情報を手に入れている人は・・・誰でもない旅人であると自らの問いの答えを出す。



 ダンカンはニノを指で撫で、そして遠矢の肩へと返した。







 「分からないことがあれば、柳火やニノに聞きなさい。

  そろそろお昼だからわしはちょっと失礼するよ。」







 ダンカンがまた優しく微笑むと、力強く遠矢の肩を叩いた。

 危うくその手で潰されるところで、ニノは遠矢の頭へ素早く移動したが・・・。

 遠矢は軽く会釈をし、村長の家の前につながる階段を下りようとしたその時であった。





















 「何ぃ!あの子が帰ってきてないだと!?」

 聞き覚えのある声が、天近くまでに響き渡り、異世界の青年は派手に転がり落ちた。











 10/01/07 作成

 10/06/12 公開

category: マビノギ

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