MyPacE

自分のペースで進み行く、全スキルマスターと言うお馬鹿な山頂へ。

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6話 特訓  

 雲が流れ去った今日、村の主は空を仰いで深く息を吸い込んだ。

 澄み渡った空気の流れに目を凝らせば、視界の中には多くの冒険者が通り過ぎる。



 鎧を身につけて仲間と話している人、楽器を奏でる人、それを鑑賞する人。

 生ゴミとなった料理を捨てる人、茶色のフクロウと白いフクロウが行き交い受け取る人。



 平凡の暮らしのように見えるが、もうじき・・・何かで引き裂かれる予感はしていた。

 いや、その気配はもう何年も前から漂うばかりであり、今やいつ来るのかすら分からない。

 友人が連れてきた、ある冒険者の目を見てからは・・・。







 すると頭上から、空気が歪む瞬間が微かに見えてハッとした。

 嗚呼、次の冒険者はどうなるのやら。

 そう、溜め息しか出て来なかった日々と暫く会えないと言うことを、まだ知らない。






















 「グェッ!!」







 まるでつぶれた蛙のような声が聞こえ、遠矢はふと目を覚ました。

 視界の真正面から、槍のように鋭く刺さった太陽の光に思わず手で遮る。

 まだ春だと言うのにやけに日差しが強いものだと一人勝手に感心し、そしてあまりにポカポカして欠伸が出てきたが噛み締めて我慢する。

 その時、遠矢は自分の背から若干揺れが生じていることに気がついた。



 そこで意識がはっきりとしてきたのか、遠矢は今誰かの上に乗っていると知り慌てた。







 「ああぁ!御免!」

 「いや・・・構わない。」







 遠矢が飛び退くとフラリと立ち上がったのは、この世界に引き寄せてきた男・・・柳火であった。

 薄水色のベストを身につけていたからか、土埃に塗れてまさにボロボロになった旅人である。

 しかしそんな、遠矢に乗られたことを気にさえしない様子。

 まるで何事も無かったかのように、ここ周辺の道、建物、看板などを見渡した。



 しかし遠矢には気がついたことがあった。







 「比奈に内野先輩は?」

 「今は違う場所にいる、後で合流する。」







 何を聞き出すのか分かっていたかのように、柳火は答えた。

 しかし先ほどの、遠矢が背に乗った時に吐かれた声はまるで別人のよう・・・。

 ここに来る前でもあるが、柳火が答える言葉は何かと短いなと遠矢は思った。

 彼は涼しい顔しているはずが、何故か顔色が悪いように見えたのは気のせいだろうか?







 「あ、待てよ!」







 柳火は、遠矢の顔を見て「聞くことが何もない」と判断したのか、背を向け歩き出した。

 遠矢はそれに慌てて早歩きでついていく。







 「遠矢。」

 「何だ?」

 「俺は今から、遠矢を元の世界へ戻す情報を探る。」

 「・・・は?」







 思わぬ言葉に、遠矢はかけ巡らせていた思考を一時停止させた。

 昨日吹き込まれたあの話は何処へ、彼は明らかに矛盾の言葉を並べている。

 先ほどの言葉にすら未だ理解しきれていない遠矢に、ふと柳火は笑った。

 苦笑いに近い、困ったのだと目が言っている。







 「あの時は戻れるか分からないと言った。戻れる方法がない訳じゃないとナオも言っている。

  『影』に見つけられ、殺されなければの話だけどな・・・。」

 「どう言う意味だよそれ・・・。」

 「そのままの意味だ。」







 恐る恐る呟いた言葉に、柳火はきっぱりと真実を叩き込んだ。

 しかしそう伝える彼の顔も少々、悲しげな瞳をしていた。これはいつものことなのだろうか。



 遠矢が口を開け唖然とし、今己に置かれている状況を理解しようと頭をフル回転させていた。

 だが考えるのにもあまりに無知であり、頭がついていける訳が無い。

 困惑している遠矢を見た柳火は、ふと肩の力を抜き溜め息吐いた。







 「あの時は・・・ゆっくり話せなかったからな。」

 「・・・・・・。」

 「ここに来たら時間はある。今はこの世界の知識を入れて、慣れたら話そう。」







 ふとした穏やかな声で遠矢に言った。

 彼なりの優しさのつもりか、それとも己自身冷静を保とうとしたのか。

 くしゃっと遠矢の頭に手を置いた柳火は笑った。







 「いきなり此処に連れ出して、悪かった・・・。」

 「いや・・・。」







 遠矢は周りを見渡す振りをして、目を逸らした。

 辺りを見渡すと、そこには穏やかな空気が流れる、のほほんとしていると言うのが第一印象だった。

 家の造り、ゲームに出てきそうな鎧や剣を身につけた人を除けば、元に居た世界と変わらない。

 今いる場所は道なのか、足元を見れば緑の草は剥げて渇いた土が顔を出しており、左右には柵がある。

 そして柳火の背後に黒い人影が見え、遠矢は「いっ・・・!」と意味不明な驚きの声を漏らした。



 彼の帽子の上にはスルリと冷たく光る銀色の刃物。

 それを手にするのは全身漆黒の鎧に包まれ、顔すら隠れる兜をつけている。

 その姿に遠矢は思わず悲鳴を上げた。

 容赦なく刃が光の速さで襲いかかってきた瞬間、金色の火花が飛び散った。







 ―――ガキンッ!!







 「背後襲うとはいい度胸じゃねぇか。」

 「相変わらず口の減らない男だな・・・!」







 まるで初めからこの事態になると分かっていたかのように、柳火は遠矢の頭から素早く剣の柄を手にして刃を受け止めた。

 彼が手にする剣は微動すらせず、逆に襲ってきた刃の方が震え出している。

 ギリギリと金属が擦れ合う音が暫く聞こえていたが、やがて相手から手を引いた。

 柳火も剣を鞘におさめ、ふと溜め息のようなものを吐き出すと漆黒の男を見た。



 漆黒の男は、柳火の背後に誰かいると気がついたのか、ふと立ち位置をずらす。

 注目された遠矢も遠矢で、驚いたあまりに自らの行動を忘れていたが、いつの間にか尻もち付いていた。

 その目には怯えている光が宿っていることに、漆黒の男は思わず目を背け柳火を見る。







 「この者は?」







 その時、漆黒の男の背筋が凍りつく。

 柳火は微かに口元に笑みを浮かべているが、それも意味がありそうな不敵な笑みだった。

 「コイツがこの笑みを浮かべているとろくでもないことになる」っと漆黒の男はそう思う。

 無愛想な人が愛想よくすると、大体恐ろしいことを考えていることばかりだと学んでいた。



 柳火はその不敵な笑みを浮かべながら、ポンっと男の肩に手を置いた。

 今からでも耳を塞いでもいいかもしれないが、彼はそれを許さない。

 ここにきて初めて、諦めることも大切だと言うことを学ばされた。







 「丁度良かった、コイツは今日ここに来た遠矢だ。

  俺は忙しくなるから遠矢に戦の指導してくれ。断ったら師匠に心無い弟子がいると言いつける。」

 「お前・・・っ!ちょっと待て!」

 「遠矢。」







 漆黒の男の言葉も華麗に無視して、柳火は遠矢の方に向いた。

 今見ると、無愛想な顔に戻っていたが何故か遠矢には恐ろしく感じた・・・気がした。







 「この人はトレボーと言う、駄目自警団員と覚えておけばいい。」

 「駄目自警・・・!!」

 「それじゃトレボー、宜しく。」







 柳火はそう遠矢に言うと、トレボーと呼ばれた男に言葉を投げつけるだけで、背を向けて足早に去っていった。

 トレボーは静かに溜め息を吐き、ちらりと遠矢の方を見る。



 その時に気がついたが、遠矢の背には弓と矢筒を背負っており、しかも矢は残りわずかだ。

 またアイツは金欠のままであるのかとふと変な予想が浮かんだ。

 思えば柳火から返されていない金貨がまだ5000ゴールドぐらいあった気がする・・・。







 「流石、ケチなマルコムと意気投合出来る奴だ・・・。」

 「ハイ?」







 ケチなのではなく、ただ単に純粋に金に恵まれていないだけだと、トレボーの頭にはない。

 独り言を呟かれた遠矢は驚いて、思わず聞いてしまったが返事は無かった。

 その代りに質問で返され、遠矢は先ほどの独り言は忘れることにした。







 「遠矢、剣の稽古を受けたことはあるか?」

 「いえ・・・弓ならありますが・・・。」

 「師匠程ではないが、剣のことならオレでも教えることが出来るからな!」

 「・・・・・・宜しくお願いします。」







 遠矢はトレボーに向かって軽く礼をした。

 すると気を良くしたのか、トレボーは豪快に笑いながら遠矢の肩を叩く。







 「どっかの誰かさんとは大違いだな!よし、片っぱしから指導してやろう!」







 春の快い風が吹き、鳥の鳴き声も聞こえる。

 真上にある太陽はそろそろ帰ろうかと、西へ向かって傾き始めていた。





















 「どうしてレイナルド先生に言わずトレボーに頼んだのですか?」

 「金がかかる。」

 ある一つの店に訪れた、店長の問いに柳火は真顔でそう答えた。











 09/07/26 作成

 10/06/11 公開

category: マビノギ

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