MyPacE

自分のペースで進み行く、全スキルマスターと言うお馬鹿な山頂へ。

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4話 偶然  

 穏やかな天気かと思えば、現実にあり得ない現象が起こる。

 これはトラウマになりそうだと、今にして遠矢は呑気なことを思っていた。

 目の前には多数の蜘蛛の群・・・そしてそいつらが取り囲むのは赤髪の男。



 先ほど男は両手で2本持つ剣で、そこら辺の蜘蛛よりも数十倍の大きさを誇る頭を倒した。

 だがその勢いをつけ過ぎたのか男は未だ息を上がらせている。

 ジリジリと迫る敵の群れに、男は少々ふらつく足取りで後退りする。







 遠矢はグッと弓を握る力を強くした。

 すると男はキッと目つきを鋭くし叫ぶ。








 「遠矢、今だ!」







 男の合図に、少々慌てながらも慣れた手つきで矢を引き出し弦にかけた。

 そして狙い定めるのは右にいる他よりかは少々小さめの蜘蛛。

 矢は風を切り、ターゲットへと深く突き刺さり、駆ける激痛に蜘蛛は悲鳴を上げた。



 その瞬間、何事かと言わんばかりに敵の動きは止まり男は動き出した。

 素早く見渡し走り出したかと思えば、男が2本の剣を握る手にぐっと力を入れる。

 刹那・・・男に襲いかかった蜘蛛達は、黒い華を咲かせ散った。

 男は己を軸とし、華麗に回転し周囲を2つの刃が横に切りつけたのだ。



 ほとんど息絶えたのかピクリとも動かなくなる。

 そして残りの敵は弓矢の練習用にと遠矢は全て射ち倒した。







 「やっと・・・倒したか・・・。」







 コンクリートが破壊された道路に、やっとの思いで静寂を取り戻したことを確認すると遠矢はホッと息を吐いた。

 戦った遠矢をまるで褒めるかのように、ふわりと冷たい風が頬を撫でる。

 息絶えた化け物もいつの間にか姿を消し、その場には遠矢と赤髪の男だけとなった。



 だが視界を元に戻すと、その瞬間遠矢はハッとして走り出した。

 男の体はグラリと揺れて危うく地に膝をついて倒れる寸前までで肩を支え止める。

 疲労が顔に出ており、額にはベットリと脂汗が滲んでいた。







 ―――ぎゅぅぅぅ・・・







 「・・・最後に飯食ったのは・・・?」







 男の腹から、悲鳴に近いほどの壮大なボリュームで鳴り出し、それを聞いた遠矢は聞かずにいられなかった。

 まだ意識はあるのか、男は囁くように言った言葉に遠矢は唖然とする。

 とりあえず自宅に連れて帰ろうかと、遠矢は男を背負い歩き出した。







 「・・・3日前って餓死寸前じゃねぇか・・・。」





















 結局比奈の行方も分からぬままに、遠矢は男を連れて帰った。

 魔物らしきものが現れた後も、無事に帰ることが出来たと思えば驚いてしまう。

 いや・・・赤髪の男は無事でもない気がするが・・・。



 遠矢は男を布団に寝かし、その後近くのコンビニへと向かい食材を買ってきた。

 普通のうどんにネギやらかまぼこやら卵を入れるぐらいの簡単なものではあるが、これでも十分にボリュームあるだろうと思い、遠矢はそれを持っていく。

 男は静かに寝息を立てて眠りについてる・・・相当疲れていたのか、遠矢が揺すぶってみてもなかなか起きない。







 「参ったな・・・。」







 静寂が気味悪いほど続き、遠矢は小さく溜め息を吐いた。

 助けてもらったことには感謝しているが、それと同時にひしひしと罪悪感を感じた。

 そこまでしてでもこの世界と、別の・・・男がいる世界のバランスを保とうとするのか。

 考えていると、不意に背後に人の気配がして遠矢はハッとなり振り返った。



 するとそこには誰もいなかったはずの背後に人が立っていた・・・。

 銀色に光るツインテールに、少々悲しげに光る海色の瞳を持つ、スルリと背丈の高い女性だ。

 服はチャイナ服を連想させる柄であるが、その服の色は黒い。

 無論、遠矢にはそんな女性に面識などあるはずも無かった。



 女性は遠矢に向かい、小さくお辞儀をする。







 「初めまして、田代遠矢さん。」

 「・・・・・・。」







 昨日のことと言い、今日のことと言い変な日だと遠矢は思った。

 見知らぬ者が自分の名前を知っている、そんなことは漫画の中にしか無いかと思っていたのだが・・・。



 女性は静かに歩み寄り、スッと遠矢の隣へと移動する。

 そして目を閉じ、手を胸の前で組む。

 するとその手の中から淡く白い光が溢れ、隣で見た遠矢は思わず自分の目を疑った。

 その光を男の方へと流れ包み込むとそのまま光は静かに消えていく。



 ふと、女性は息を吐き遠矢の方へと振り向いた。







 「遠矢さん、柳火からの話は大体聞きましたか?」

 「りゅうか・・・?」







 遠矢が聞き返すと、女性は少々間を置いて小さく溜め息を吐いた。

 思い返せば、男・・・多分その男が柳火と言う名前なのだろう、彼が喋ったのも文章にすればほんの数行である。

 それに、会ってからそんな話さぬ内に襲撃も遭ったせいでもあり、それを話そうかと迷った。



 知らぬ内に顔に出たのか、女性は遠矢の顔を見てふと笑みをこぼした。







 「思った以上に予定が早まってしまったようですね。」

 「・・・・・・。」







 予定とは、昨日電話越しに言われた『影』とか何とかの話であろうか。

 睡魔のせいでもあるのだろうか、昨日の記憶が上手く取り出せず曖昧な把握で終わる。

 よく思えば、未だ2人が訪れた理由なども理解出来ていないことに遠矢は気がついた。



 外から日の光も漏れているはずが、漂う空気は冷たく感じたのは春のせいなのだろうか。

 ふとそんな関係のないことを思った遠矢は、一人で首を振る。







 「遠矢さんを連れて来る様に頼んだのは、私です。」







 沈黙が支配していた中、女性はそう自白した。

 他人事のようには言っていないことの証明か、目を閉じ澄んだ声で反省の言葉を吐く。







 「この先を予知し、遠矢さんを私たちの世界へ引き連れるようにと柳火に頼みました。」

 「・・・・・・。」

 「でも貴方だけでは無かった・・・恐ろしい影は3つ見えました。」

 「ナオ。」







 いつの間に目を覚ましたのだろうか・・・。

 今まで静かに寝息を立てていたはずの赤髪の男・・・柳火は上半身を起こしていた。

 呆れた様な顔をしている気がしたが、それは元々らしい・・・青い瞳がそう語っている。

 ナオと呼ばれた女性は、「あら」と声を漏らして笑った。







 「報酬を渡せないからと本人で片付けようとするな。」

 「そのように見えましたか?」

 「・・・・・・。」







 柳火は溜め息を吐き、彼はナオからゆっくり遠矢へと視線を移した。

 すると遠矢は思わずビクリと身を震わせる・・・まるで何処かの南の海のように澄んだ瞳だ。

 そして出会って初めての、柔らかい笑みを浮かべた。・・・気がした。







 「偶然だった。遠矢の友人らしい人2名も俺らの世界に行く運命とは。」

 「・・・・・・え?」







 思わぬ言葉に、遠矢は思わず己の耳を疑った。

 「どう言うことだ?」と彼自身の顔に書いてあったらしく、柳火は苦笑いする。

 あまり・・・笑顔には慣れていそうにない感じがした。







 「内野一樹と早木比奈、2人共お前、田城遠矢と同じことを言われて去っている。」

 「そんな俺、さっき先輩と・・・・・・。」

 「お前の仲間達も『力』が強くて恐れたんだ。だが遠矢・・・。」







 すると、柳火の目は一瞬で笑みは消えキッと鋭くなる。







 「お前の影が持つ『力』が一番危険なんだ。今の俺やナオの手でも負うことすら出来ない。」

 「・・・・・・。」







 影・・・力・・・遠矢にとっては何を言っているのかすら分からない話だった。

 だが昨日彼から聞いた『地獄』と言う単語からして、よっぽど危険なのだろうと察することは出来る。

 それも・・・友人である2人も同じことであるなら・・・。

 否定する理由など無くなった気がした。







 この世界に居ても・・・。







 そう考えていたら、いつの間にかナオからも視線が注がれていた。

 世界の危険を察するほどの力があるその女性は、やはりとても澄んだ瞳をしている。

 何もかも、透明にして見通してしまうほど綺麗である。



 そして、ナオの口が開いた。





















 「異存はありませんね?」

 声も瞳と同じくらいに透き通って行き、その問いにゆっくり力強く頷いた。











 09/07/01 作成

 10/06/07 公開

category: マビノギ

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