MyPacE

自分のペースで進み行く、全スキルマスターと言うお馬鹿な山頂へ。

3話 襲来  

 反応が無かった。

 確か今日は自分の学校だけ登校日であるはずで、実際は土曜でほとんどの者は家にいるはず。

 そしてその一人、早木比奈の進学先も休みだと遠矢は思っていた。



 何度もインターフォンを鳴らしては、ドアからの気配すらも感じない・・・。

 こんな早朝から遊びにでも行ったのだろうかと思えば、それでも両親は居るはずだ。







 返答も無い玄関の前で、遠矢はどうしようかとその場で空を仰いだ。

 当然空に答えなど書いてあるはずがない。



 異変と言うものか、今日は朝からやけに静まり返っている。

 今までは気にかけておかないで置こうとは思っていたものの、やはり不安が全身に駆け巡る。

 早くこの場から去ろうか、それとも比奈を探すか迷った。








 早木比奈、彼女は遠矢が高校1年の時から同じクラスである同級生である。

 周りからはカップルなんじゃないかと言わんばかりの目をされていたが、ずっと友達以上恋人未満の接し方をしていた。

 そう言うのも、比奈には彼氏がいるからであって決して手を出そうともしなかった。



 思えば・・・俺は臆病なんだなと、遠矢は乾いた笑い声を小さく漏らした。

 大人しくて優しい、そんな異性なんてこの世には溢れるほど存在する。

 だが違う、比奈に惹かれたのはもっと別の理由があるものだ。



 手先が器用で勉強すれば誰よりも負けない成績を取る。

 そこじゃない、彼女に惚れた理由は遠矢にはあった。

 そう・・・他人には見えない理由が・・・。







 だが彼女は今、彼氏と上手くいっているのであればと思い、踵を返した時。







 「・・・・・・?」







 一瞬、自分の影が揺らいだ気がして再び立ち止まった。

 まだ肌寒い春だと言うのに、やけに生温い風が遠矢の頬を掠める。

 また影が動くかと、遠矢はじっと目を凝らして見た。



 っとその時、目に止まらぬ速さで己の影は遠矢の足元へと流れ込む。

 すると背筋にゾッと悪寒が走り短く悲鳴を上げた。







 「何なんだ・・・!?」

 「予想していた時刻よりも早くに活動し始めた訳だ・・・。」

 「!!」







 遠矢自身、一人の呟きかと思われたが、その返答が聞こえ思わず振り返った。

 今まで気配らしきものも感じなかったはずが、どうやってこの場に来たのかは問う暇すらない。



 その者・・・年は20歳ぐらいの男は塀の上に腰かけていた。

 茶色の飾り気無いズボンに、紫色の長袖、その上には薄水色のベストを身につけている。

 ただその服装だけは一般的によく見るものだが、そこだけだ。

 髪は燃えるような赤色で綺麗に染まり、前髪に覗かせるのは純粋な海の色。

 右目だけ前髪が少々長く隠れてしまっていたが、それでも十分人の目を止める人物だった。



 そして・・・遠矢が何より気になったことを短く問い出した。







 「昨日電話に出た人か・・・。」

 「そうなるだろうな。」







 男は、遠矢と同じく短めに答えると塀から飛び降りる。

 距離があり今まで気が付かなかったが、男の腰には長い剣らしきものがあった。

 この世で言うファンタジー、映画やゲームなどでよく見る武器となってる。

 それを今目の当たりにして、遠矢は思わず目を疑った。

 そして更に、男が背負う見慣れたものを見て思わず呟く。







 「弓矢・・・。」







 元弓道部であった遠矢には無くてはならない物で、今久しく見た気がした。

 「弓道なんてやって何になる」と一樹に言った一言を思い出した。







 「本当は明日、『奴ら』が出てくる前にお前を向こうの世界に送って消去したかったのだが・・・仕方がない。」

 「戦うのか・・・?」







 男が腰に下げていた長剣を鞘から引き抜いた所を見て、遠矢は問う。

 無言で小さく頷き、そして男は苦笑いをする。

 これも仕方がない、と言う諦めの顔なのだろうか・・・。



 その時、再び生温い風が吹き出し思わず不気味さに遠矢の背筋が凍った。





















 「来る・・・!」





















 感知したほんの一瞬で地形、視界、頭の中、全てが一転する。

 鼓膜が壊れそうなほどの、爆弾でも落とされたかのような破壊音が響く。

 平面のごく普通の道路だったはずが、破壊音と共にコンクリートは盛り上がり悲鳴を上げた。

 そして・・・コンクリートから何かが這い上がってきた。







 遠矢はその現れた『何か』を見て顔を真っ青にする。







 今までに見たこともない・・・巨大な漆黒色の蜘蛛の大群だった。

 家一軒家にさえ入り切らないんじゃないかと思われるほどの大きさ。

 それにその巨大蜘蛛が引き連れているらしき小さい方も、人間を襲えるにも十分なほどだ。







 男は遠矢を壁へと突き飛ばし、高く飛躍する。

 そして塀の上に足をつけ、また飛ぶと地から現れた巨大蜘蛛に向かって勢いよく長剣を振り下ろした。

 長剣の刃へ触れた部分からはどす黒い液体が吹き出し、巨大蜘蛛はこの世にないような悲鳴を轟かせる。



 だが男はそれでも気が済まなかったのか・・・。

 どこからか取り出したもう一本の剣をもう片方の手で握り、巨大蜘蛛をとにかく攻めた。

 二刀流となった男は巨大蜘蛛に隙を与えず、返り血を浴びながらも斬り倒す。



 止めの一撃か、男は剣を思いっきり振り払い蜘蛛を奥の方へ突き飛ばした。

 すると頭であった蜘蛛は息絶えたのか、ピクリとも動かなくなった・・・。







 しかし頭を倒されては子分が黙っていられないものである。

 その時丁度意識をはっきりと取り戻した遠矢は声を上げた。







 「後ろ!!!」

 「・・・っ!」







 男の背後に忍び寄ったのは数え切れないほどの蜘蛛の数。

 それが一斉に襲われれば、身動きなど取れなくなるに決まってる。

 危険を早くも察した男は振り返ると同時に剣を横に振った。



 勢いが良かったからか、一番先頭にいたのは軽く吹っ飛び息絶える。

 それを確認してから、先ほどの男の威力を見て警戒する敵の数を数えるかのように見渡す。

 すると男は己の背に手を伸ばし、それを遠矢の方に向かって投げた。







 「元弓道部、俺の世界の弓矢を使ってみな。」

 「・・・・・・。」







 何の木で出来ているのだろうか・・・遠矢がその弓を握った時の疑問であった。

 丈夫に出来ているのは確かだが、部活で握った弓より滑らかであり、価値も高そうに見える。

 しかし男がいる世界ではこんなものを握るのも当たり前であるのか・・・。



 矢は残り十数本となっていて、思わず顔を顰めた。

 それを見て察したのか、男は少々バツ悪そうな苦い表情となった。







 「金欠だった。」

 「矢を買うのにか!?」

 「今は最小限の援護だけしてくれればいい。」







 そう言うと男は遠矢に背を向け、剣を構えた。





















 「早くしてくれ・・・。」

 そう、心で空に祈りながら・・・。











 09/05/06 作成

 10/06/07 公開

category: マビノギ

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