MyPacE

自分のペースで進み行く、全スキルマスターと言うお馬鹿な山頂へ。

スポンサーサイト  

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

category: スポンサー広告

tb: --   cm: --

0話 帰宅  

 耳に「ガタン」と言う音に目が覚めた。

 青年は少々ウトウトとはしていたのだが、今居る場所が頭に駆け巡りハッとする。

 辺りを見回せば横に長い空間に、その左右につけられた長い席。

 窓は墨汁で一面塗られたように黒い景色で、ちらほらと小さな白い光らしきものが通り過ぎる。



 しかし、その空間には青年一人しかいない。

 その瞬間嫌な予感が全身にビリビリ走り眠気が芯まで完全に覚めた。







 「次は終点・・・・・・」







 そしてその嫌な予感は運転手の言葉が告げた。

 既に葉桜となってしまったが未だ肌寒い春のことである。












 目の前にはそのまま停止しそうな、退屈そうにしている改札口がかったるそうに「ガタン」と開いた。

 昨日辺りにちゃんと要らぬ物はゴミ箱行きとしたはず。

 だがそれでも教科書や書類、電車での暇つぶしの本やゲーム機など・・・。

 今の鞄はそれだけでもやけに重く感じた。



 今日の授業と、引き返しの電車に乗ってロスした時間と共に圧し掛かった疲労に溜め息を吐く。

 この後に待ち受けるのは面倒な家事やら学校からの課題があり、更に意識が遠退いた気がした。



 家を出てから数年、青年・・・田城遠矢は大学に通い一人暮らしをしていた。

 っと言うのも、一人暮らしを始めたのは高校2年の時だろうか。

 もうとっくにこの生活も慣れたはずが、大学入学後はあまりの不運続きで疲れ果てていた。



 大学での授業を組み立てるに毎日隙間無く1時限目には全て必修科目が入る。

 更に数日だけ5時過ぎまでに行う5時限目が必修で入り・・・、それまでの間が物凄く暇になったりもするのだ。

 それが今後も毎週続くと気が遠くなる・・・と言う不運はまるで苛められているように、毎年のように起こることで悲しいことに慣れてしまった。







 「はぁ・・・。」





 無駄に広い駅のフロア。

 彼氏でも待っているのだろうか、メールをしながら待ち遠しそうに遠くを見つめる女性。

 今日一日の仕事帰りの疲労に目が死んでいるサラリーマン。

 むしろ眠そうに目をこすり欠伸している、遠矢と同じぐらいの歳の学生。

 実に様々いるが、いつも通りに帰ることが出来たら、こんな光景も目にすることは無かっただろう。



 しかしそんなことはどうでもよく、早く帰りたいと体が言っているように足を速く動かし歩く。

 するとふと、耳に打ち付ける。ビニール袋が暴れるような音を聞いてハッと窓の外を見た。







 「あ・・・。」







 真黒に塗られた外は肉眼ではよく見えないが、耳には確かな不快を感じさせる音をつかんだのだ。

 窓にしがみ付いたのは大粒の水、そしてそれは滝のように打ちつけていた。



 思い返してみれば、朝に流れたニュースでは綺麗なお姉さんが素敵な笑顔で「晴れます」と言っていた。

 きっとあのお姉さんは外見はモテそうな笑顔を振舞うが、立派な雨女なのではと思う。

 遠矢は明日ではなく、来年の方向に目を向けて溜め息を吐いた。







 まるで雨に怯えているように足取りはやけに重かった。





















 今まで帽子をかぶっていたから、肌にはなかなか当たらずに気が付かずにいたものか。

 男は動かしていた手を止め、どんよりと元気のない鉛色の空を見上げた。

 男の顔面へ大粒の雨が襲い、やられた方はただダルそうに、機嫌悪そうに目を細めていた。







 「つっ・・・!」





 余所見をしたからか、左手親指に微かな痛みを感じ手を引っ込めた。

 その者の右手には稲刈り用の鎌を手にし、その刃に誤って切ったみたいである。

 男は軽く舌打ちをし、とりあえず辺りにある小麦を手早く鎌を操り刈り取り腕の中に収めた。



 用が終わり、そそくさと離れた場所にある旅館へと向かおうとした時、ふと男は立ち止まる。

 雨は嫌いだと言うのもあるのだが、第一折角の収穫が濡れれば品が台無しとなると分かってる。

 だが、目の前に見覚えのある、銀髪のツインテールに澄んだ海のように青い瞳を持つ女性が立っていた。

 黒服を着ており、そこから見せる白い肌に見惚れない者などいないだろう。



 男は顔に戸惑いの色を表したが、その割には落ち着いた口調で訊ねた。







 「何の用だ?」







 すると何か伝えようと彼女もゆっくりと言葉にしたが、生憎雨は酷いらしく落雷が暴れた音でかき消されてしまった。

 更に強く叩き潰そうと言わんばかりの豪雨に、男はまた機嫌が悪そうな表情を出す。

 女性は何か問い出すように首を傾げたが、何を言っているのか分からない。

 ただただ男は、彼女の話を聞いて眉間にしわを寄せているだけだった。



 最後に、男は黙って小さく頷くと、女性はまるで母のように優しく男に微笑みかけた。

 そして用が済んだのか、空気に溶けるように姿を消していった・・・。







 「・・・・・・。」







 それを見届けた男は、もう食材にもならないほど雨を吸い込んだ小麦を見て溜め息を吐く。

 刈り取った小麦をとりあえず急いで旅館へ持って行き、店前にいた女性の店員に処分するよう頼むと快く引き受けてくれた。

 すると男はそのまま、全身水分を含めたままに背を向け、勢いよく走りだす。



 女性は大きく手を振ると、ふと強い風が巻き起こり、彼女は乱れた少々長めの髪を耳にかけた。

 ふとその目先に映ったのは、梟らしき大きな鳥のシルエット。

 その鳥はまるで男の使いであるかのように背後へと距離を縮めた。







 鳥から受け取った、雨に濡れた紙を見て、男はそのまま姿を消していった・・・。











 09/04/27 作成

 10/06/01 公開

 10/06/21 修正

category: マビノギ

tb: 0   cm: 1

コメント

No title

小説読んでみた―。
これからが楽しみだね。ってか2009年に作成してたんかい!!

すごいな。


俺も頑張らないとだな。


すごいキャラが違くてごめんよ。

椿 #79D/WHSg | URL
2010/06/11 22:52 | edit

コメントの投稿

Secret

トラックバック

トラックバックURL
→http://mmomypace.blog.fc2.com/tb.php/73-2318132e
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。