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診断:都市伝説化

―――あの後、彼の姿を見た少女は何処にも居ない。

診断メーカー『あなたが都市伝説化したら……』にて、出た結果を書いてみた結果こうなった。
とある企画の自キャラであるフィリックス・マグナスを、都市伝説化の対象にしています。

※一応怪談(のつもり)でグロ(のつもり)です、苦手な方は開かない方が宜しくて。


【銀鼠の囁き】



 夏の夜空を照らすのは1つの大きな焚火。薪に囲まれ、その中心で踊る炎は、パチパチと火の粉を散らす。
 赤く、橙色に染める辺りには人影がたった2つ。その周りには、誰一人黒い影も無かった。

 1人は少女、柔らかい土の上へと正座で座り、もう1人の青年はベンチに腰掛けてじっと視線を落としている。
 少女の手には、数枚のカードを捲り、土まみれな地面へと置く。ぽつりと何かを呟き、また1枚捲られる。
 少女の細い呟き声は、やけに冷えた空気に吸い込まれるほどに小さい。
 だが、それを上手く拾い集めた青年は、柔らかく微笑みながら伝える。少女のように、細く、小さな囁き声で。

 彼は立ち上がり、少女の黒く長い髪を触れ、そして頭を優しく撫でた。腕にはめられた、銀色の何かが煌めく。
 炎によって生まれた光は、何かを暗示させるようで、少女は不安そうに彼を見上げた。
 しかしか細い声が問いかけても彼は、次はハッキリとした声で「大丈夫だ」と笑う。
 湿気に晒された肌は、薄らと汗を浮かべていた。パチリパチリ、また火の粉が空を焼く。

 青年は少女の狭い肩を、軽くとんとんと叩いてから、クルリと後ろへと振り向かせた。
 その先には、旅館らしいが古い建物。1度振り返り、瞳を一瞥したが彼はただ頷くだけだ。
 てってっ、と少女は薄暗い夜道を駆け、古い建物の扉の裏へ姿を消す。不気味なほど静かな旅館へ。

 そして青年の姿は、既になかった。



 夏の夜空を照らすのは1つの小さな街灯。このような田舎町には、その街灯も疎らで夜はかなり暗い。
 どんっどんっと空気を震わすのは、太鼓の重い響き。カンカラと陽気に笑う金属の合唱が、この日を至福する。
 子連れの親子、近い年同士の友人、恋人同士に夫婦共にと、実に様々な人が一点へ集まる、祭り。
 人混みは決して空いてなどいない、多くの雑踏や談笑に紛れた中、1人の少女は黒い空を見上げた。

 おかあさん。と、すぐに掻き消される声で呼ぶが、当然のことながら誰の目にも止まらない。
 少女は目に小さな手を持って行く。湿った肌は、蒸される空気の中へと徐々に放たれていった。

 帰っちゃったのかな。定まらぬ母親の居場所に不安を覚えた少女は、そんな予想が頭を過る。
 足はもうくたくたで、目まぐるしい光景に頭も痛い。疲れたと訴える体は、自然に人が通らぬ道へと向かった。

 ―――あぁ、来ちゃダメだよ

 ぴくり、と少女は身を強張らせる。誰かの声が耳に入った気がして、俯いていた頭を上げたが誰も居ない。
 遠くからの声が聞こえて、間違えて反応しちゃったのかもしれない。勘違い、少女はまた歩き出す。

 帰路は簡単だ。家と学校の近くにある、一直線の通学路。下校の時より暗いこと以外、何も変わりない。
 不気味なほど静まる見飽きた田んぼと、太い木々と長く生い茂った、一層深い闇を包む山に挟まれている道。
 どんっどんっとテンポよく吠える音と、かんからかんと鳴る金属の音は、遠くで絶え間なく響いている。

 響いている、ように思えた。

 あれ、と少女は再び顔を上げる。意識せずにずんずんと突き進んでいる先は、月明かりを遮る山の中だ。
 ふわふわと、夕立に濡れた後に柔らかくなった土が変形する感触。無数に落ちた枯葉は、湿ったクッション。

 前へ、前へ、前へ。
 やがて少女は早足に、駆け足に、全力疾走で、山の急な斜面を転げ落ちるような勢いで速度を増す。
 はぁ、はぁ、と息は上がり苦しくなってくる。バクバクと心臓の音は速まり高鳴っていく。でも止まっちゃダメ。

 なんで?

 ガサガサと雨を避けた茶の葉は少女の居場所を知らせ、それはやけにうるさく鼓膜を震わせた。
 ダメ、ダメ、止まっちゃダメ。飛ぶように下り道を走る少女は、ひたすらに振り返ることもせず突き進む。
 何か大きなものに、何か怖いものに追われている。その感覚は確かで、背筋に貼りつく汗が知らせた。

 あっ、と思った時は既に遅い。地面に太く広く張り巡らされた、木々の根に足が阻まれた。
 小さな体はそのまま前へと、ぐらりと大きく傾き、1回転、2回転、バサバサと葉は少女を転がす。
 そして、此処で初めて振り返って、見てしまった。見ちゃダメだと言われていたのに、見てしまった。

 だれに?

 小さな体が沢山、ボロボロになった服を着た、少女とあまり変わらない年齢に見える子が沢山居た。
 その体にはあまりにも相応しくない、包丁、カッターナイフ、金属バット、彫刻刀、ギラギラと光る。
 いやだ、イヤだ、嫌だ、来ないで、コナイデ。
 走ってくる沢山の子供から、身を縮めたまま逃げることが叶わない少女は、ぎゅっと固く瞼を閉じた。
 ガサガサガサ、喧しく響く木の葉。道連れだ、道連れだ、口々に言う子供は無邪気に笑って。

 ―――危ない場所だから、近づいちゃダメなんだ

 びちゃ、と何かが少女の頬にへばり付いた。さっき、勘違いした人とそっくりな声で、少女は思わず瞼を開けた。
 ざくっ、今度は畑の土を耕す時、何か硬いものに当たったような音。再び、何かが地面へ貼りつく。

 ―――だから、嬢ちゃん

 その時、少女はその声の元へ視線を上げた。夜空の星々と月明かりを遮っていた青葉は、さらさらと揺れる。
 何枚、何十枚もの壁を飛び越した青白い光は、微かにその正体を照らし出した。キラリと、何かが銀色に光る。
 キレイなその両手が握るのは、黒光りに嘲笑う刃物。三日月状に、にっこりと笑うそれは、黒く染まり笑う。
 駈けてきた子供は、何人も増えた。時々、触れようと伸ばして来た白い手は、向こう側へと通り過ぎていく。

 ―――今日はもう、ゆっくりおやすみ

 その声と共に、少女は言われた通りに目を閉じ、意識はゆっくりと夢へと導かれていく。
 カチリと笑い、銀色の両手は赤く染めた。大きな背中に、少女は見覚えがあったが、結局思い出せなかった。



 ねぇ、知ってる? 何を?
 この山に、出たんだって。 またその話?
 ニュース見なかったの? ホントその話好きだね、見たよ。

 子供を大量虐殺する、殺人鬼の霊を。





 公開:13/09/13





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 フィリックスが都市伝説化した場合
 場所:通学路
 時間帯:大禍時
 モチーフ:失踪・斧・占い
 遭遇した場合:カタカタカタ(((;゚;Д;゚;)))カタカタカタ

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