MyPacE

自分のペースで進み行く、全スキルマスターと言うお馬鹿な山頂へ。

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16話 信頼  

 影と言われる存在は何か、それは死を意味したものだと彼は答える。

 尋ねた青年は目を細めた、何故なら答えた彼は・・・。

 『影』の存在は確実に迫っている。そう察したのは彼が『生きている時』からだ。

 いつしか、異世界の光景を目にした時が脳裏に過り、青年は目を固く閉じた。



 あの一言を後悔した。

 何故お前は、笑っていられるんだと激怒しそうにもなった。

 あの頃の光景は、今でも夢の中にこびりつき離せずにいる・・・。






















 都会の夜は、昼以上に狂ったような歓喜や荒々しい怒声が空へと飛び交っていく。

 空は星も月も見捨てられたような、漆黒な夜空が広がり街を暗闇で閉ざそうと試みている。

 しかし昼とはまるで豹変したオオカミのよう、その夜空を食いちぎる勢いに光り、そして騒がしい。



 遠矢は自宅からの最寄駅で、一つ先へ降りるだけの近くに、そんな街があった。

 街で馬鹿に騒いでいる人々は、ほとんど街の近くにある学校帰りの高校生や大学生が8割を占める。喫煙など当たり前、酒飲めば暴れるような情けない者も数多く居る。

 勿論、危険な街だからこそ警察の目は常時光らせているものだが、それでは簡単に治まらない。

 そんな街に、遠矢はよく学校帰りプラス翌日休日である日によく足を踏み入れていた。



 流石に喫煙や飲酒は遠慮しているが強制されない。寧ろ、遠矢が20歳になることを静かに待ち望む知り合いが多かった。両親がこの事を聞けば気を失うに違いないが、今はそんなこと関係なかった。







 「田城じゃねぇか、学校お疲れぇ!」







 通りを歩けば、遠矢の姿が目に入った知り合いは人懐っこそうな笑顔を送る。周りに居る怖そうなお兄さんお姉さんも、その声にまた連鎖するように声がかかる。遠矢はこの時の快感が堪らなかった。

 元々、独りであることに苦痛を感じていた。学校に向かっても特に何も無い日常。高校は部活で先輩や同期の友人も一応居た。しかし時はあっという間に過ぎ、高校の頃の友人や先輩に会うことも無くなった。

 だからこそ、大学になればこの街に踏み入れる機会も増えて行った。







 「遠矢ー!」

 「・・・あ、先輩!」







 大通りのど真ん中、正面から来る人の流れを避けながら歩いていると、正面から全力ダッシュしてくる人が見えた。

 先ほどの声も全力で駆ける人からであると、遠矢は分かっている。

 遠矢よりも頭一つ背の高い、がっしりとした体格で日に焼けた肌の男性。黒く薄いタンクトップに、工事用の長いダボダボなズボンを履いている。短く漆黒の髪が、べたべたにつけられたワックスによりワイルドなボサボサした髪型になっている。そして何よりも何本か欠けた、デコボコした歯に目が行く。



 坂谷進也、遠矢と最も親しい男性だった。







 「遠矢、驚いたぞ。」

 「・・・何がですか?」

 「隠すなよ、お前・・・弓道部辞めたんだってな。」







 あれほど全力ダッシュしながら、進也は一つも息乱れること無く強く言い放った。

 遠矢はその瞬間、ふと表情を曇らせ俯く。進也の目から逸らしたとも言える。

 すると、先ほどの言葉とは逆に、遠矢の肩に手を置き優しく微笑んだ。







 「何、話聞いてやるよ。あんなに熱心に取り組んだ部活を、遠矢が理由も無く辞める訳無いだろう?」





















 遠矢にとって進也は弓道部の先輩・・・と言うより、恩師に近い存在であった。

 まるで父親のように遠矢を、時に厳しく叱り、時に優しく慰めていた。進也の存在を遠矢は一生忘れられないほど、数多くのことで救いを受けていた。

 しかし、そんな彼もいつしか街に現れず、遠矢の心もどん底へ落ちていったこともある。

 今目の前にある出来事が、信じられなくて氷漬けされたように動かなくなった。







 『元気にしていたか、遠矢。暫く姿を見せること出来なくて済まないな・・・。』

 「・・・いえ。」







 遠矢にとっては、そう答えることがやっとであった。

 何故居なくなったのか、何故今此処に姿を現したのか、聞きたいことが盛り沢山でありパニックに陥っている。

 だが、今目の前に現れた姿を見て一つだけ遠矢は確信した。



 ―――先輩は、もう居ないのだと・・・。







 『そうだ遠矢、その段ボールの中の物は俺からのプレゼントだ。』

 「・・・ありがとうございます。」

 『あぁ、あと聞きたいことは柳火に聞きな。あいつも多分、俺が居ないことで苦しんでいると思うが・・・。』

 「・・・・・・分かりました。」

 『今の柳火には、遠矢・・・お前が必要なんだ。』

 「・・・・・・・・・。」







 まるで母親のように、進也は言いたいことを片っ端から項目を並べ話す。

 そこで何よりも強調しているのが、突如同行するようになった青年、柳火についてだ。



 必要とされている、その言葉に実感が湧かず遠矢は唖然としている。

 寧ろ柳火は俺をお荷物のように扱っているのではないか、そう疑わずにはいられない。アルビダンジョンにある巨大蜘蛛の部屋で倒れそうな時も、半ば呆れた顔を浮かべられたこともハッキリと覚えている。

 だが、仮にもし本当であるのならば・・・。







 「俺は、柳火にどうしてやればいいんだ・・・?」







 進也は、待ってましたと言わんばかりににぃっと欠けまくった歯を見せた。







 『柳火を、ずっと信じてやればいいんだ。それだけであいつも救われる。』





















 やはり恩師と言うべきなのかもしれない。

 遠矢がそう思ったのは、もう既に目の前に居ない優しい男性の姿を見てからだった。







 体格が良いが剣道やスポーツなどには全くの運動音痴であり、唯一の取り柄が弓道である坂谷進也。遠矢が先輩と呼ぶのは弓道に関してであり、人生で言えば恩師と言っても過言ではない。歳が少々離れているがそれ以上に様々な経験を積み、それを遠矢に多くのことを教えている。言い出せばキリがない程。



 遠矢が弓道部を止めたその日、2人は街外れの小さな神社へ向かった。

 いや、その時進也が無理やり引っ張り出したと言っても良い。遠矢は必死で抵抗したが、気分が落ち込んでいてそれどころでなく、諦めて連れて行かれることにしたのだ。



 時は深夜になり、神社は昼や夜以上に不気味さを増しているが、2人にとってはそんなことお構いなしだ。

 木の枝に限界かと思われるほど葉が張りつき、風が吹く度ワサワサと騒がしく鳴る。そんな木や枝も多く、林か森のような木の束であった。木の葉に包まれている寺はまだ新しい方なのか、朽ちている部分は少ない。







 「共に楽しめる仲間が居ないから辞めた、かぁ。」







 進也はポツリと呟いた。寺にある石段の下から2段目に、進也と遠矢は腰かけ天と地を見ていた。進也の呟きがそのまま遠矢の胸に刺さったのか、隣に居る後輩は若干顔を歪める。

 遠矢自身、下らない理由だと自覚している。友達が居ないから学校を辞めたのと同じようであるように。しかし進也は呆れずにただ静かに遠矢の言葉を待った。







 「弓道、本当面白いですね。」

 「そうだろう?一樹が勧めたのも分かるだろう。」







 進也はいつも、まるでその辺の女子のように下の名前で呼ぶ。田城遠矢でも、その先輩である内野一樹でも。いつも名字で呼ばれていた為か、進也に会うまでは自分の名前を忘れそうになったものだ。

 元々、進也は一樹からの紹介で遠矢は知り合い、出会って翌日から早速弓道について片っ端から叩き込んでいた。いきなりすぎる指導に、遠矢はヘトヘトになり一樹は全身が動けなくなるほどの猛特訓を受けていた。「いきなり張り切りすぎですよ先輩・・・。」と一樹が口だけ動かして溜め息吐いていた姿が浮かぶ。



 叩き込まれれば叩き込むほど、遠矢は弓に夢中になっていった。運動もせずにただ一人、自宅へと足を進めて行った日々が遠ざかっていく。毎日のようにミッションをこなしては布団に倒れ込む、そんな日々でも遠矢は面白く感じるようになった。

 しかしその楽しみが消えたのは・・・。







 「まぁ仕方ないな、俺も一人だったら弓道やっていなかったし!」

 「!!」







 何かを決心したような、神社全体に響き渡るように進也は声を張り上げた。あまりの予想外な言葉に、遠矢は驚き思わず紺色に染まる天を見上げた。今までの努力を水の泡にされては、彼でも激怒するものかと密かに怯えていたが、そんなことが全く無い。







 「先輩・・・許してくれるんですか?」







 思わず口走った言葉を、言い切ってから遠矢は「しまった」と口を塞ぐ。

 まるで許しを期待していたような、甘えの言葉。



 だが、進也は怒る様子も全く無く、勢いよく石段から立ち上がり背伸び。そして振り返り言い放った。

 しかも疑問を持ったような表情で。







 「俺はお前に、『弓道部を辞めるな!』と言った覚えがないぞ?」

 「・・・え?」







 進也は遠矢に「何言っているんだ」と不思議そうな顔を向けた。今の遠矢の顔はまさにきょとんとした顔であり、お互い変な表情を浮かべ睨めっこ状態であった。信じ難かった、今能天気な顔されて言われていることは・・・。

 しかし確かに、弓道部を辞めるなとは聞いていなかった。

 そんな遠矢に、再び進也は柔らかく微笑み、遠矢の肩を叩いた。







 「大丈夫、今の遠矢は弓道で学んだことを頭に入れていれば、これからやって行ける。」

 「・・・・・・本当に、ですか?」

 「俺を信じろよ遠矢、俺もお前を信じているからさ。」

 「・・・・・・はい!」







 遠矢は石段から立ち上がった。

 進也が「信じろ」と言う言葉は力強く、それも口癖となっているのは遠矢は分かっている。だからこそ余計に元気付けられ、この一言で全て支えられてきた。

 彼と共に街に行けば、たまに激しい争いを起こすのがたまに傷だが、それは仲間が傷つけられて激怒することしばしば。それほど仲間思いで、決して裏切らない。それが坂谷進也と言う男だった。自分を信じてくれる人がいるからこそ生きていけるのだと、遠矢は思い知らされた。







 「先輩、俺、弓道は辞めちゃいましたけど、教員免許取りに勉強しようかと思うんです。」

 「・・・・・・。」







 遠矢は静かに言う。自信が無い訳では無く、恥ずかしい。遠矢は未だ紺色が張り詰められた空を見ながら淡々と語った。弓道は少し休めるだけで、教員免許取ってからまた一から叩き込んで欲しいと、話した。

 話し終わった頃、夜空のほんの微かな明かりに反射し白く光る線が見えた。短く途切れ途切れに、一滴の雫により一直線に描かれたものの姿は、長い間堪えていた遠矢の気持ちであった。笑いながら、振り返った。





















 「・・・先輩。」

 そこには、星のわずかな光に照らされた神社だけが映っていた・・・。







 11/02/08 作成

 11/03/02 公開

category: マビノギ

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