MyPacE

自分のペースで進み行く、全スキルマスターと言うお馬鹿な山頂へ。

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15話 人影  

 守るべきものは何だと問う。

 ある人は世界と答え、ある人は大切な人と答えた。

 その真実を知っているのは答えた己自身であり、また結果を知っているのも己自身である。



 欲しいものは何だと問う。

 ある人は力と答え、ある人は仲間と答えた。

 その真実を知っているのは答えた己自身であり、また行方を知っているのも己自身である。



 しかしそれは、全て不幸となり巻き込んだ。

 渦巻いた中に、溺れかけている者がヒトリ・・・もがいていた。






















 昼はもうとっくに過ぎ、日は山の向こうへと向かっている時である。

 橙に染める夕日は賑わう街を染め、また影を縦に長く伸ばして行く。

 漆黒のカラスが1羽、まるで人をあざ笑うかのように、濁った鳴き声を空に響かせた。



 夕日に負けないと言わんばかりの色が、今遠矢の目の前に飛び込んできた。

 いや、夕日と言う訳ではなく、夜の怪しいオーラと対抗しているようにも気がした。



 床には紅の絨毯が広げられ、階段も欠かさず同じ絨毯が敷かれ固定されている。天井から照らすライトも、ほんのり赤みを帯びて目が痛い。

 しかしそれ以外は、大量のクローゼットにいくつもの服がハンガーにかけ吊るされ、作業台らしきものの上にはいくつもの布や裁縫道具が散らばっている。

 衣料品店・・・つまり衣類を取り扱う店となる。







 「全部シモンさんが作ったんですか・・・?」







 遠矢は恐る恐る口にした。見た目によらず、様々なデザインで作られた衣装が置かれている。

 軽い布で作られた簡単なローブや、可愛さを重視した女性向けのスカート、負けずにズボンメインにデザインされた男性向けの衣装などがある。

 帽子や、ブーツや、革の手袋など、種類は多い。







 「私が作る服は特注、たまに趣味で作る程度ね。派手な衣装が好きなの。」

 「そうなのですか。」







 遠矢は思わず感心し、それと同時に喋り方に対する抵抗感も無くなった。

 外見や喋り方はアレだが、まず悪い者でも何でもない。誘われた時の言葉から、何か感じ取れるものが遠矢にはあった。

 それに、遠矢の目にまた気になるものが目に入る。







 「この服・・・。」







 「柳火が着ていたものとデザインは同じ」と言いかけた時、シモンはふと目を向けた。

 遠矢は慌てて服から手を引き、しかし視線だけはその衣装に釘付けのまま。

 色は違うが、袖はない上着に長いズボン・・・それに特徴的となる肩から肩まで胸板を通るベルトがついている。

 彼のことであれば、しかめっ面で買いながらも大切に着こなしているのではないかと、勝手な妄想も浮かんだ。







 「遠矢ちゃんにも似合う服きっとあるわ。遠慮なく探してちょうだい。」

 「あの・・・お金は・・・。」







 思えばこの世界の通貨は何なのか、遠矢は今更ながらハッとしてシモンの方へ向いた。

 しかし彼はニコニコしたまま、ご機嫌であるのか鼻歌交じりで布を弄っている。

 ここで高い服を買えば、柳火の呆れた顔が浮かんでくるに間違いなく、たった数日だけでこんなにも恩を貰うのも気が引ける。

 (柳火の奴隷として一生を生きて行く自信がついてきた・・・)だが正直それは勘弁だ。

 そうぼんやり思い浮かべた時、遠矢はふと天井を見上げた。







 「・・・誰だ?」







 ―――呼んでいる・・・?



 試しに天井から目を離し、辺りを見回して見る。シモンは異変に気がついた様子も無く、若干音痴気味に鼻歌を歌いながら布ばさみを動かす。誰かの声が聞こえたはずであるが、人影すら見えない。

 遠矢は一人顔をしかめ、自分の頭をワシャワシャと掻いた。







 『何年振りだろうなぁ。』

 「!?」







 次はハッキリと聞こえたが、その声に思わずビクリと体を震わせた。

 低い声だ。遠矢が元居た世界で、夜の都会で暴走族のバイクと共に渦巻く野郎の声を連想する。

 しかし何故か、遠矢はその声に懐かしさを覚える。初めて聞くことは確かだが・・・。



 何処から聞こえるのか、キョロキョロと首を振り見渡す。人か、幽霊か、物か・・・。







 『何処を見てる、正面を見てみろ。』

 「・・・どわっ!」







 聞こえた通りに顔を正面に戻した瞬間、目と鼻の先に誰かが遠矢の顔を覗き込んでいた。遠矢は驚いて何かにつまずき派手に後ろへと倒れ込んだ。シモンは流石に何事かと言わんばかりに、目を見開いて振り向いたが何とも情けない姿でもがく青年がいた。

 床には何もなく綺麗になっていたはずが、1つの段ボール箱によって遠矢の足を妨げたようである。

 段ボールの中に尻から入った彼は、自分に何が起こったのか暫く考えていた様子。







 「なっ・・・!」

 『久しぶりだな、田城遠矢。』







 ようやく我に返った遠矢は、そのままの体勢でやや斜め上を見上げた。

 肉声は確かに聞き覚えが無い。が、目の前に映る人影には忘れようにも忘れられないものだった。

 何よりもそれを証明するのは、暫く忘れそうになっていた自分の名字・・・。







 「坂谷先輩!?」







 遠矢の言葉に、シモンも驚いたことは―――気がついていない。





















 「なぁ、柳火。」

 「どうした。」







 カタカタと木製の板がぶつかり合う音、馬の蹄が奏でる音は居心地良く鳴る。

 水色の絵の具を、筆でそのまま一筋で斑無く塗り潰されたような、見事な晴天の下に、一台の馬車が歩いていた。

 それほど険しくも無い平原で、所々は畑があり柵で区切られている。見たところかなり大きな土地を使っているらしく、使われていない畑も所々ある。

 一つの幅広い道をのんびりとしており、その先の大きな城のような建物へと向かっていた。



 柳火は片手で持てるよう丁寧にたたんだ地図から目を離し、隣に座っている男性へと移した。

 男性は柳火よりも年上であるようで、頬はがっしりとした男性らしい顔となっている。ワックスを多く含めたべたべたでボサボサな漆黒の髪、垂れた瞳は少々ブラウンが入っている。がっしりとした肉体であるが、彼は剣が使えないことを柳火は知っている。







 「覚えているか、光の騎士と会った時のこと。」







 何の前触れもなく、男性がふと口にする話題の変化はもう慣れている。

 柳火は少し間を開けた後、「あぁ」と小さく頷く。それが何かとは聞かず、男性が喋ることを待った。

 カタカタと鳴り揺れ動く中、男性は斜め上から見える空をぼんやり眺めて続ける。







 「あの騎士はフィアードダンジョンの中で彷徨っていた。いや、誰かを待っていたのかもしれないな。」

 「そうだな。」

 「ある日読んだ本でも、フィアードには様々な魂が彷徨い幻影を残しているらしい。俺がここで亡くなったら・・・そこに行きたいなと思うんだよな。」







 柳火は、彼に何故とは聞かなかった。

 同意か、それともどうでもいいと思っていたのか。それは本人もよく分からずにいた。ただこのような会話も、馬車に乗っている時はいつものことであり、同じ話されても毎度同じ答えを答えたかすら柳火はあまり覚えていない。

 だが今回の話は初めての話題であり、ふと何か聞くことにした。







 「恋人待ちか。」

 「恋人じゃねぇな。」







 男性は即座に苦笑いしながら首を傾げた。







 「が、それに近い奴だな。」







 何をやらかしたのか、デコボコに所々欠けた歯を見せ、いかに怪しく笑って見せた。

 それは気持ち悪いとブーイング食らっても、男性にとっての最大の笑顔であることも柳火は知っている。







 「・・・安心しとけ。」

 「あぁん?」







 まるで、これ以上退屈な話を聞きたくないと言うような大きな溜め息吐きながら口を開く。

 地図を後ろの荷物の上へと投げ、近くにあった肘掛けへ乱暴に肘を投げながら。

 怪訝そうな顔をして見てくる男性を、鼻で笑い押しのけた。





















 「お前が死んだら、俺がそいつに伝えておく。」

 当時の目的地は、目と鼻の先にあった。







 11/02/05 作成

 11/02/11 公開

category: マビノギ

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