MyPacE

自分のペースで進み行く、全スキルマスターと言うお馬鹿な山頂へ。

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12話 場所  

 立ち尽くしていた。

 誰か来るわけでもなく、彼も誰か来ることを望んでいる訳ではなかった。

 手が氷のように凍てついていた。

 誰かが温めに来るわけでもなく、彼もこのままで良いと諦めていた。

 頭の中は真っ白だった。

 誰かが慰めるわけでもなく、彼も何か考えたいとも思っていなかった。



 ただその時。

 同じ経験をした人は居ないかと、彼は見つけたいとは思った。







 丸い満月が浮かんだ時の話・・・。






















 「他人事言って済まなかった・・・。」

 「マスター、それ呟いたの何度目かな。」







 ティルコネイルから南へ、ゆったりとした下り坂を歩いて行くと、そこには都会と言える街がある。

 そこでは多数の旅人が訪れる。通りかかり別の町へ移動する者、街で商売をする者、情報を集める者などなど。

 交通の便としては最高の位置となっており、この世界での生活が短い人から長い人まで、数々の者から愛用されている。



 眠らない街『ダンバートン』に向かう途中の道に、少女と青年の姿があった。



 通称マスターと呼ばれている少女は、竜梨華と言う名である。

 竜梨華は1頭の小麦色の馬を引いており、その背には異世界の青年と赤髪の青年が乗せられている。

 因みにその2人は爆睡中である為、多少の揺れにも全く動じなかった。



 そして、竜梨華と共に歩くのは20歳ほどに見える青年である。

 栗色の短い髪を隠すよう、魔法使いのようなとんがり帽子を被っている。

 更に黄色のロングコートを着ており、高級感のある毛皮が飾られている。腕には金属の筒のような物体が見られた。

 サブマスターを務める・・・つまり竜梨華の次に権限をある程度持つ地位の人だ。







 「ゆさ殿も分かっているじゃろう・・・柳火殿は働く時と怠ける時のギャップが激しい。」







 サブマスター、ゆさと呼ばれる青年は少々困ったように頬を掻く。

 竜梨華は罰の悪そうな表情を浮かべ振り返り、今連れている一頭の馬を見た。



 馬の種類はハーフリンガーと部類され、人を運ぶのが最も得意と言われる馬である。

 家庭では大半はハーフリンガーを1頭は飼っており、荷物や人運びに大いに活躍している。



 しかし、この馬は竜梨華が飼っている馬ではない。

 この馬にとっての主人は、今自分の背中で爆睡している赤い髪の青年である。

 主人へ内心呆れているものではあるが、放っておけない優しい性格であり、実はハーフリンガーの特徴の一つでもあった。







 「そう言えば、遠矢君をうちのギルドに入れることにするのかい?」







 ゆさはふと立ち止まり、それにつられて竜梨華も足を止めた。

 馬の隣に直ぐゆさが立つ位置となっている。それは馬に乗せられた遠矢を見て言っていた。

 帽子の広い鍔で隠れ見えづらいが、微かに見える表情は不安そのものである。



 竜梨華はふと笑った。







 「何、相手の意思を聞かずに入れる訳ないじゃろう。

  今は今じゃ・・・帰る場所がない人を、見捨てられるかの?」

 「見捨てられないね。」







 風が大地を駆け巡った。無数の木の葉を揺らし、囁かれる言葉は誰も知らない。

 ゆさは空を仰ぐ。雲の影すら見当たらない、障害のない夜空で星と月が姿を現していた。



 元々、何もなかったこの場所に・・・。

 帰る場所など無かったこの場所を思えば思わず笑みがこぼれる。

 2人は再び共に歩き出した。







 向かう先は、決まっていた。



















 ―――今や遠い昔の話のように思える。



 寝ても覚めても俺の周りには誰も居ないもので、それも当り前だった。

 知り合いが居るとしても、その人すら寄せ付けない空間と言うものがある。

 それこそ、『家』と言う名の孤独の空間であった。



 俺の名前を呼んできて、俺が振り返ろうと思う者など居ない。

 純粋に、ただの顔知りだけの人が多かった・・・溢れるほど・・・。



 俺は普通の生活を望んでいた。

 周りの人が過ごしているような毎日を味わいたかっただけだ。

 ごく普通の日常を過ごすことは、そんな困難なものではないと思い込んでいた。

 両親と会話して、怒ったり笑ったり、温かい飯を食いたかった。







 だから・・・。

 この孤独な日々は苦痛で仕方がなかった。





















 遠矢が目を覚ますと、見慣れぬ高い天井が見えた。

 ビルのような天井造りであるが・・・ただ、ふと頭に浮かんだ文字は『城』と言うもの。

 寝たまま視線だけ泳げば、天井中央部には高級そうなシャンデリア、壁には剣や巨大な斧などかけられている。

 そして、今横になっているベッドはやわらかく、居心地の良いものであった。



 上半身を起こして辺りを見回すと、遠矢は驚愕した。

 広い・・・とにかく部屋の中はとても広く、そして天井も高かった。

 ベッドは遠矢が寝ていた所以外、全部で5つほどあり、縦一列に壁側へと寄せられている。



 部屋中央部には、長い木製のテーブルと椅子が並べられていた。

 そして一番端には他の椅子とは少々高めであり、テーブルには気が遠くなるほどの書類が置かれている。

 羽根状のペンの重さで倒れたらしい、漆黒のインクがばらまかれており、多少書類に被害が及んでいた・・・。







 遠矢は自分の靴を履き、出入り口らしき扉へ足を進めた。

 そして見えてきたのは、ごく普通の長方形のプレートである。



 『黎明の仔猫 様』っと書かれている。







 「・・・・・・?」







 遠矢は小さく首を傾げた。この文字が、何を示しているのか全く分からない。

 人の名前では無いのは確かである。しかし、そうとなると団体の名前か・・・。







 『遠矢、入るぞ。』

 「!?」







 そう考えているとノックの音が2度鳴り、聞き慣れた声が聞こえた。

 遠矢はその場から2歩下がり、顔面衝突を回避する。顔を出したのは、予想した通りの柳火であった。

 様子を見に来たように見えるが、彼の手にはお盆があり、見慣れない飲み物がコップ3つ分置いている。







 「起きたか。」







 いつも通りの短い言葉ではあったが、安心したような柔らかい表情となっていたことに驚く。

 遠矢は頷いただけで、黙ったまま相手の姿を見た。



 服装がいつもの黒いローブではなく、黒い袖無しの上着に長い紫色のズボンであった。

 ローブ姿では見えなかったが、それなりに鍛えられた肉体であり、腕の太さがそれを物語る。

 遠矢の視線には特に気にしないようで、そのままドアを肩で押し開け部屋に入っていった。







 柳火は飲み物らしきものをコップ3つ、長いテーブルにポツンと置く。

 そして遠矢を手招きし、自分は椅子を外側へと向きを変え、ゆったりと座る。

 遠矢は柳火の隣に、同じく椅子を外側へと向きを変えて座った。







 「柳火、ここは?」

 「ギルドホール・・・つまり俺が所属している組織の家みたいなものだ。」

 「じゃあ『黎明の仔猫』は・・・。」

 「ご主人が所属している組織名のことだね。」

 「ニノ!?」







 遠矢の問いに答えるのが面倒臭くなったのか、柳火はポケットから引っ張り出したネズミ・・・。

 つまりニノをテーブルの上に置く。そして案の定機関銃の如く遠矢からの質問を明確に答える。

 その説明のついでに、ニノは何故主人がこのギルドに長く所属しているのかも教えた。

 途中主人から鋭い目で睨まれ、笑って誤魔化していた姿もあったが・・・遠矢は気のせいとしておいた。



 エリンの中では、ギルドと言う会社のような組織が存在する。大中小、活動方針、その他云々。

 それもそれぞれの個性だと柳火は言った。



 そして設立者、つまりマスターを中心にメンバー達で動く。

 ダンジョンへ行き魔族を退治し勢力を下げる組織、街の人々からの依頼を受け解決する組織。

 更にはエリンの日々の生活を大切に過ごす組織、演奏会や競争などのイベントを開く組織もあると言う。







 「でもそれぞれのギルドで抱える大きな役目は一つ、居場所を提供する役目があるんだ。」

 「居場所・・・?」







 ニノはお喋りする喜びを感じているのか、クルリと円を描くように回る。

 そして引っ掛かる言葉に、遠矢は繰り返し問い首を傾げた。







 「この世界での帰る場所だ、俺も昔は無かった。」

 「帰る場所・・・か。」







 遠矢は天井を仰いで呟いた時、柳火はどこか寂しげに微笑んで顔を背いた。

 苦い思い出でもあったのだろうかと、遠矢は少し気にかけたが何も出来ないままである。

 歯がゆい思いをしながらも、遠矢は仕方なく、テーブルに置いてあった飲み物に手を出した時だった。







 「柳火殿大変じゃ!あ、目が覚めたのね、おはよう・・・じゃなくて!」

 「落ち着け、マスター。」







 どたばたと駆け込んできたのは、10代後半に入ったばかりらしい少女。

 光を反射させているように見える白い髪に、ヒーラーが愛用していると言う白いドレスを着ている。

 柳火は冷静にその言葉を浴びせるが、遠矢にとっては少女の正体に驚きを隠せなかった。







 「何があった?」

 「お主の友達が・・・熊に囲まれていたのじゃよ!」







 「・・・・・・。」

 目を鋭くした彼は背を向けて走り、遠矢が振り返った時には、既に姿は見えなかった。











 10/06/01 作成

 11/01/14 公開

category: マビノギ

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