MyPacE

自分のペースで進み行く、全スキルマスターと言うお馬鹿な山頂へ。

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11話 組織  

 ギルド・・・それは人により様々な思い入れがあると言う。

 ある人は仲間と共に魔族を倒し、強くなり絆も深めていくと言う。

 ある人はのんびりお喋りし、互いを知り居心地のいい場所と言う。

 そしてある少女が設立したギルドと言う組織では・・・。







 「柳さん遅いですねー。」







 のんびりとした声が眠気を誘う、黒髪の少女はやわらかい生地をハサミで切る作業をしていた。

 しかし手つきは数時間前とは少々不器用になっていたが、綺麗に切ろうと懸命に取り掛かる。



 今や日が替わってしまい、アドバンエイレル(Alban Eiler)からベルテン(Beltane)となった。

 ここエリンには、現実と変わらぬ曜日と言うものが存在している。

 日々それぞれに司られた属性が存在し、エリンの住人はその祝福を受ける。

 ある日は全国で売られる物が安く売られ、ある日は魔法の効果を与える巻物が武器に貼りやすくなり・・・。



 そして今日は、ダンジョンに異変が起こる日となっていた。







 「もう少し熊の魔符集めしても良かったんじゃないかなぁ・・・。」







 呟くように後悔を漏らしたのは、さらりと長い金髪の少女だった。

 魔符集めと呼ばれるものは、彼女たちが所属している組織で与えられた仕事のことだった。

 あの日は運がよく、今居る2人のコンビでは魔符と呼ばれる札が貼られている熊を立て続けに見つけ、すぐに終わってしまった。

 黒髪の少女は少々嬉しそうだったが、この金髪の少女にとっては完全不燃焼に近い。



 そして今いる、『家』に帰ってきたら誰もいないオチである。







 「・・・暇だなぁ。」







 深夜1時を告げる時計の鐘と共に、その呟きはかき消された。


 柳火は深く溜め息を吐き、先ほど取り出したボロボロになっている札を見た。

 今はもう死骸となった『元魔族』は息が途絶え、ひっくり返ったままでただただ、どくどくと血を流している。

 静まる巨大な空間で、気味の悪い沈黙が流れた。



 彼が今持っている札は、魔符と呼ばれる魔族が作った邪悪な物質である。

 その魔符を貼られた者は、自我を忘れ人間を襲う、魔族の操り人形となる物と言われている。

 しかし詳しい事は分かっておらず、ただ彼が教わった知識では・・・。



 『魔符があったら剥がせば何とかなる。』







 「お兄ちゃん・・・?」







 剣についた血を振り払いながら、泉理は振り向いた。

 泉理が立つ足下にはぐったりと倒れ込んだ遠矢がいる・・・しかし夢心地が良さそうに寝息を立てている。

 何か言いたそうにしている少女を無視し、柳火は無言で遠矢の方へと歩いた。







 「帰るぞ、泉理。」

 「待って!異世界への扉を見つけてないの!」

 「ここには無い、空気を掴むような行動しても時間の無駄だ。」

 「・・・・・・!」







 柳火はぴしゃりと言い放ち、泉理は圧倒されて黙り込んでしまった。

 今や爆睡している遠矢を、慣れたよう背負う形へと姿勢を取る。手から落とした弓は柳火自身で背負う。

 ニノは喜んで主人の肩へと乗るがはたき落された。



 泉理はその場から動かず、俯いたままで握った拳を震わせていた。

 女神からの言葉か、姉からの言葉か、それとも自分の行動への後悔か、グルグルと頭の中に渦を巻く。







 ―――結局、外に出られないじゃないか・・・。







 っと・・・。







 「泉理。」

 「・・・・・・何よ?」







 呆れ顔の柳火から声がかかり、泉理はムッとしてぶっきら棒に返事をする。

 広い部屋から奥へ行けば、入口と同じ女神の像が立っている小さな部屋があり、そこから地上へと戻ることが出来る。

 距離はややあるが、空間で反響し少し大きい声出せば届くものだった。







 「別世界へ行く方法かは分からない。ただ世の中の動きの変化はあった。」

 「・・・どうすればいいの。」

 「村長からイヤリングの話を聞いてこい。」







 そして少々間をおいた時、「俺は断ったが・・・」と一言つけ足した。

 彼が断った理由を、泉理は後々知ることになる・・・。





















 遠矢を背負ったまま、ダンジョンから出ると第一に出迎えてくれたのは1本の鋭い矢であった。

 あまりの不意打ちに柳火はバランスを崩したが、何とか体勢を整える。

 矢は祭壇とギリギリ狙いを外したように、特に支障の無さそうな場所へ深く突き刺さった。







 「さぁ、説教の時間となろうか柳火殿。」







 この呼び方をする者は知っている限り一人しかいない。柳火は少々罰悪そうな表情を浮かべながら、声の主を見上げた。

 所属する『ギルド』と言う組織の中で、方針を決め動かし、メンバーを世話する。

 少々大きな権利を握る力を持つ者を、人々は『ギルドマスター』と呼んだ。

 そして柳火が所属するギルドでは、マスターの権利を握る者が今目の前にいる。



 白銀の短い髪に、白いヒーラーコートドレスを身につけている、竜梨華(ルリカ)と言う名の少女であった。







 「マスター、何でそこに・・・。」

 「私の可愛いメンバーをしつけるのは当然じゃろう?」







 (可愛いと思うなら弓を構える必要はないと思うが・・・)と柳火は心から突っ込んだのは言うまでも無い。

 背で寝ている遠矢は全く動じず、ただ深い眠りについているだけであった。







 「マスター。」

 「何かね?」

 「遠矢をギルドに入れようとか考えてないだろうな?」







 ギルドメンバーは主に、マスターやその代理、サブマスターが加入の許可や勧誘を行う。

 しかし、それはギルドにより各方針が違ってくるものではある。

 そして柳火が所属するギルドでは、マスターが人を見て判断を下す流れとなっていた。



 柳火は目を細め、声のトーンを低くし問う。

 わざわざダンジョンの入口まで迎えに来るより、トレボーが立っているあの場にいる確率が多いと予想したものだった。

 竜梨華からの不意打ちに、少々驚いていたのはそのせいでもある。







 「魔族から守ることは、人数が多い方がいいじゃろう?」

 「・・・・・・どうしてそれを!?」

 「ナオから全て聞いておる、多少影がどうのこうのワケワカラン事情もあるのは無視して。」

 「・・・・・・。」







 彼女は真剣な面持ちで問題発言もさらりと言ったが、柳火が口挟むことは無かった。

 しかし後に沈黙が流れ、それもあまりに長く竜梨華が少々気味悪く思った時だった。







 「あっはっはっはっはっ!」

 「・・・柳火殿?」







 あまりにも意外な、彼の笑い声であった。肩を震わせ、笑いを堪えようにも声として漏れる。

 怪訝そうな顔をした竜梨華は戸惑いながら、彼に声をかけた。

 背負われている青年は目覚まさないかと心配したものだが、まるで強力な睡眠薬を飲まされた後のように、全く動じない。

 とりあえず状況に判断することが難しく、彼が冷静に話してくれる時を待った。







 「マスター、すげぇや!普通を装っていたつもりなのに全て見透かしてさ!」

 「・・・・・・。」

 「昔も今も変わらない、マスターの背中に触れる日も多分無い!」

 「・・・・・・。」







 そして柳火は腹を抱えひたすら笑っていた。ただただ壊れたように笑った。

 そんな様子を見て、竜梨華は溜め息を吐き、治まる時を待つ。



 3分ぐらいだろうか・・・。

 笑い疲れた様子となったのか、顔からふと笑顔が消え、がくりと膝をついた彼が一言呟いた。







 「眠い。」

 2段重ねとなった居眠り人間達を見て、竜梨華は再び溜め息を吐いた。











 10/05/20 作成

 11/01/13 公開

category: マビノギ

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