MyPacE

自分のペースで進み行く、全スキルマスターと言うお馬鹿な山頂へ。

9話 世界  

 遠矢、この世界で過ごし始めてそんなに経っていませんが元気ですか?

 私は今、青樹(ソウジュ)さんと共に、フィリアと言う村で過ごしています。

 村の人は皆耳が尖っている、『エルフ』って言う種族らしいの。

 あと、弓の練習も始めてみました。元は剣道部だったのに可笑しいよね。



 今はバラバラだけど、いつか合流出来る時が必ず来ると首長さんが言ってくれました。

 それまで、どうか遠矢も元気に過ごして下さい。



 また、フクロウに手紙を伝達させて頂こうと思います。 ――― 早木 比奈 より






















 ダンジョンにはそれぞれ祭壇と言うものが存在し、何かの物を落としたり捧げたりすると中へ入れると言った。

 そして人間が住む大陸では、『復讐の女神』と呼ばれている翼を生やした女性の石像が立っている。

 そう・・・復讐の・・・。







 「ご主人様、どうなさいました?」

 「・・・いや、この石像を見たことがある気がするんだ。」







 ―――しかし思い出せない。

 アイリは少々不思議そうな表情を浮かべたが、直ぐに気を取り直すようにヒラリと舞った。







 「後で柳火さんに話してみるのが良いですよっ、何か良い情報を得るかもしれません。

  でも今は村人を助けないとっ!」

 「そうだったな・・・行くか!」







 トレボーから受け取った、ダンジョンへ入る『通行証』を手に、それを地面へ落とした。

 ヒラリと一枚、不思議な紋章と文字が描かれた、縦に細長い紙切れが、祭壇と呼ばれる足下に触れた瞬間だった。

 周りの明るかった景色が一変し、祭壇の近く以外は暗闇に包まれるようになる。







 アイリが言うには、ダンジョンによって構想、風景、出現する魔族などそれぞれ異なるらしい。

 アルビダンジョンでは石で造られた箇所がほとんどで、魔族も特にと言った強い者はいない。

 しかし、長らくの放置や自然の力に侵された場所では草木ぼうぼうなダンジョンもある。

 更に海や砂漠などに埋もれたダンジョンもあると言う・・・。そしてそこで命落とした者は魔族になり襲うこともあるのだと。







 「アイリってさ・・・。」

 「何でしょうか?」







 遠矢は剣を抜きながら、地下へと続く階段を下りながら、ふと言葉に漏らした。







 「柳火について、何か知っている事は無いか?」







 気味悪い沈黙が暫く続き、アイリの表情も凍りついたように動かなかった。

 しかし、やがて苦笑いのような表情を浮かべてアイリは言った。







 「残念ながら、私はあまり詳しくありません。

  私と同行している時は、滅多に心を開いてくれなかったので・・・。」

 「そうか・・・。」

 「ただ、柳火さんは遠矢さんと同じ、この世界の人ではないことだけ確かなんですっ。」







 アイリからその言葉を聞いた瞬間、遠矢は疑問の声を漏らし足を止めた。

 驚いているのは確かではあるが、新たに疑問が浮かんだ。

 『柳火自身が住んでいた世界へ戻る方法を、何故探していないのだ』と・・・。

 しかし、それをアイリに聞いても答えは返ってこないことを察し、黙ってまた歩き出した。



 地下へ続く薄暗い階段も終わり、再び『女神』の石像を見つけた。

 初めてダンジョンに入った身ではあるが、遠矢はある異変を感じる。







 「女・・・の子・・・?」

 「ご主人様!この人がティルコネイルの住人ですっ!」

 「この子が!?」







 それはあまりに幼い、10歳少し上辺りの女の子だろうか。

 綺麗な青色の長い髪を右方面へ一つに縛り、、桃色の肌を持っている。

 小さな子が剣を片手に倒れている姿を見れば、誰でも慌てふためくであろう・・・。



 遠矢は少女の方へと向かい走り、少女を抱え起こした。

 声をかけてみるが、幸い息もあり傷もかすり傷が多い程度で、問題も無さそうである。







 「・・・・・・?」

 「あ・・・目を覚ました?」







 遠矢は恐る恐る口を開く。少女の瞳は静かな海を連想させる純粋な青色で、吸い込まれそうになる。

 少女はゆっくりと首を動かし辺りを見回し、そして言った。







 「異世界に行きたいの。」

 「え?」

 「お姉ちゃんが言ったの。家を出て行くなら『女神様を助けに行きなさい』って。

  それでね、今日夢の中で女神様が出てきて『助けて下さい』って言ったの。」

 「一体何のことだ?」







 少女が必死に訴える言葉に、遠矢はハッとする。

 この子は俺と同じ夢を見たのだと、確信出来るような気がした。

 あの、黒い翼を持つ女性が助けを求めていた夢・・・。



 ―――何処へ向かえば・・・いいんだっけ・・・?







 「お兄ちゃん、私とこのダンジョンをの奥に行こう。家を出てお姉ちゃんを探したいの!」

 「・・・・・・。」







 遠矢は少女の言葉に戸惑いながら、腰にかけている剣へと視線を移した。

 アイリは困惑した表情を浮かべていたが、やがて笑顔で頷く。



 この世界でダンジョンと呼ばれる場所は一体どのような場所なのか、それを見るのも良い機会だと言い訳を考えながら・・・。

 それに、異世界と言う言葉が気になって仕方がないのも事実である。

 もしかしたら、元の世界に帰れる手がかりがつかめるかもしれないと思って・・・。







 「一緒に行こう。」

 「やった、ありがとう!お兄ちゃんのお名前は・・・。」

 「田城遠矢・・・遠矢で良いよ。」

 「私は泉理、宜しくね!」





















 彼らしくない低い声が聞こえた。

 今この場に居ない青年に彼の姿を見せたら、きっと唖然としたまま棒立ちになるだろう。

 アルビダンジョン前の枝別れの道、明りは街灯だけが頼りとなっている暗い道で、それは起こった。







 「・・・はぁ?特訓でアルビに行かせただって?」

 「お・・・落ち着け柳火、お前だってそうだっただ・・・っ!?」







 ―――ガキンッ!



 金属が掠れ合った音が鋭く響き渡り、辺りにいるキツネ達も何事かと言わんばかりに振り向く。

 漆黒のローブをまとい、今はフードを外しており深紅色の髪を見せる青年・・・柳火は目を細めた。

 先ほどの音は柳火が怒りに任せ、トレボーの頬近くに突き刺した音だ。

 金属同士で掠れ合ったのは、トレボーが身につけている兜であろう・・・。







 「遠矢と俺とは訳がちげぇ・・・、アイツは魔族に狙われているんだぞ。

  例え魔族の力が弱いアルビとは言え、行方が知られたら墓行きに決まってる!!」







 トレボーの胸倉を掴み、乱暴に引き寄せ怒鳴り散らした。

 柳火は目付きを鋭くし、冷や汗を流すトレボーへと睨みつける。手が怒りに震えていた。

 その時、馬の蹄の音が此方に向かってくる音がし、鋭い声が飛んできた。







 「柳火殿!少しは落ち着かないか!」

 「!?」







 胸倉を掴んでいた手がビクリとして震えが止まる。すると柳火は声の主を見ることせず、手を力なく手放した。

 まるで頭からバケツの水を被せられたように、急に冷静になり溜め息吐く。



 馬に乗って向かってきたのは、10代半ばに見える少女であろうか。

 白く短い髪に、白い衣装をこなしている。褐色の澄んだ瞳が一層迫力を増した。







 「トレボーも相変わらずじゃの、だが私の可愛いメンバーに苦労させないで欲しい。」

 「マスター済まない・・・説教は後で聞く。」







 柳火は少女に向かい軽く頭を下げると、突き刺した剣を引き抜き走り去って行った。

 取り残されたトレボーは、先ほどの出来事から恐怖を見たように足が棒のようになってしまっている。

 そんな姿を見て、少女は溜め息を吐き苦笑した。







 「アイツも変わったんだな・・・。」

 静か過ぎる夜道で、自警団員が吐いた言葉は空気に溶けていった。











 10/03/23 作成

 11/01/10 公開

category: マビノギ

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